【体験型】Dvorak/ Colemak/ Eucalyn配列って本当にいいの?

はじめに

こちらの記事はキーボード #3 Advent Calendar 202120日目の記事となります。

自己紹介

はじめまして、knottankと申します。ずっとROM専でしたが、1週間前にKEEB_PD駆動アカウント作成をしました。

キーボードAdvent Calendarへの参加も初となります。よろしくお願いします。

さっそくですが、

以下の文字列をメモ帳にタイプしてみてください。(英語キーボード前提です。JISキーボードをお使いの方は、':に読み替えてください。)

s ja ts f us /a g ma ;f
(スペースは見やすさのためにいれてあるだけですので無視してください)

Dvorak配列と呼ばれる論理配列のキーボードで、この運指を行うと、「おはようございます」とタイプされます。

QWERTY配列を用いて「ohayougozaimasu」と入力するより楽な運指だったんじゃないかなと思います。

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こうなってた

本記事について

本記事はQWERTY配列以外の論理配列の布教ポエムです。

近頃、キーボードに関心のある界隈では、「QWERTY配列より効率的なタイピングが出来る配列があるらしい」と、すっかり変則論理配列の知名度が上がりました。 しかし、「実際運指がそんなに楽になるの?」、「移行が大変そう」、「英語用に作られた配列だから日本語入力には関係ないでしょ?」「オタクが使うものでしょ?」と、実用に至っていないケースが多くを占めているとも感じています。

というわけで、どれだけ運指が楽になるのかを、QWERTY配列のままで、実際に体験していただけたらなと思って書きました。

前半で各論理配列や運指効率の研究に関して簡単に説明しつつ、後半で変則論理配列の体験に移ります。


論理配列

論理配列とは、キーボードのキー1つ1つにどの文字を割り振るか、を指します。

この記事ではまずQWERTY配列を、変則論理配列としてDvorak配列、Colemak配列、Eucalyn配列の3つを取り上げます。

QWERTY配列

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QWERTY配列のレイアウト

大多数の方が無意識に使っている論理配列だと思います。

以下の理由から非効率な論理配列と言われています。

  • ホーム行の使用頻度が低い。母音の「IUEO」が上段にある点からも明らかです
  • 同じ指を連続で使う(同指打鍵)ケースが多い
  • 同の手の連打が多い。自分の名前をすべて右手でタイプ出来るなんて人も少なからずいると思います
  • etc.

「sweaterdresses」をタイプしてみてください。大変ですね。。。

なぜこのような配列がキーボードのスタンダードになったのかには、諸説入り乱れています。「タイプライタ時代にキーがジャムらないようにあえて効率を落とした」が割と有名だと思いますが、英語で頻出する「er」が隣り合っている時点で疑問が残ります。

京大の研究によると電信オペレータの存在が、配列の定着に関係しているとのこと。詳細が気になる方は英語ですが以下の記事を参照ください。

Dvorak配列

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Dvorak配列のレイアウト

QWERTY配列の代替として、1930年代にアメリカのDvorak博士によって開発されました。

  • アルファベットの出現頻度(ただし英語)に基づく
  • 左手に母音が、右手に子音が集められている → 左右交互の打鍵
  • 「th」、「ch」、「sh」が打ちやすい
  • etc.

などの利点があります。

ただ、移行コストが結構高かったり、小指への比重がちょっと高かったり(ls -lコマンドとか最悪ですね。)、がデメリットです。

英語向けに効率化された論理配列なので、日本語が打ちにくいシチュエーションがあります。「k」と「y」と母音が左手にあるので、か行や「きゃ」「ぴゃ」が該当します。

これに関してはローマ字テーブルをカスタマイズすることで、解決可能です。

Dvorak配列のローマ字テーブルカスタマイズ

Google日本語入力などのローマ字テーブルを変更します。

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Google日本語入力でのローマ字テーブル編集ボタン

即座に取り入れられる変更点としては↓です。

  • か行に「k」ではなく「c」を用いる → 「ca ci cu ce co」
  • 拗音のコンビネーションキーに「h」と「n」を用いる。例えば、
    • 「きゃ」→「cna」
    • 「ひゃ」→「hna」
    • 「りゃ」→「rha」
    • 「じゃ」→「zha」

さらに効率化を行う場合は、

を参照してみてください。面白いです。

Colemak配列

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Colemak配列のレイアウト

Shai Coleman氏によって開発された配列です。

Colemakの利点などは公式ページのFAQに詳細に述べられていますが、一部取り上げると↓

  • QWERTY配列との共通部分が多く、移行コストが低い
  • 小指比重の軽減

Eucalyn配列

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Eucalyn配列のレイアウト

ゆかりさん(@eucalyn_)が開発された配列です。

母音が寄ってて少しDvorakに似ている印象です。

詳細はゆかりさんのブログにあるので、そちらを読んでいただければと思います。特徴を簡単に上げると、

  • 日本語ローマ字入力に特化
  • よく使われるショートカットキーはQWERTYのまま
  • HJKLは矢印型に→Vimの使いやすさ

です。

QWERTY配列との共通キーが多くキーバインドをほぼそのまま使い回せるので、移行コストはColemakと同様に小さめなのかなと思います。

eucalyn.hatenadiary.jp

論理配列の変更方法

自作キーボードであればRemapで弄れます。

そうでない場合やキーボボの配列自体はQWERTYのままにしたい場合は、DvorakとColemakであればOSのキーボード設定から変更できます。

Eucalyn配列は、試したことは無いですが、WindowsならDvorakJmacならKarabinerを使えば達成できそうです。

ちなみに僕は、OSのキーボード設定をDvorakにし、Google日本語入力のローマ字テーブルを変更しています。

配列効率性の研究

Carplaxという最適な配列を研究するプロジェクトがあります。

Colemakのウェブサイト曰く、

According to carpalx, which is the most extensive research on keyboard layouts done so far, (以下略)

「FAQ - Colemak」https://colemak.com/FAQ より引用(2021年12月19日)

と、配列の最適化に関して深く考察しているプロジェクトがあるので、興味がある方はご参照ください。(結構な規模なので簡潔には紹介できません...)


体験コーナー

では、記事冒頭でやったように、QWERTY上での運指を示すので、各配列の打鍵感を体験してみてください。

なお、「ちょ(cho/tyo)」などのローマ字のつづり方が複数存在する文字は、打鍵のしやすさによって各配列で変更しています。

1つ目

「自作キーボードちょっと出来る」

# QWERTYではそのまま↓を運指
jisaku ki-bo-do chotto dekiru

慣れるまで何回か打ってみてください。

# もしDvorakだったら↓の運指
/g;aif ig'ns'hs ijskks hdigof

# もしColemakだったら↓の運指
yldani nl-b;-g; ch;ff; gknlsi

# もしEucalynだったら↓の運指
,flakg kf-ns-is josjjs idkfug

それぞれ、同指打鍵がなく左右交互打鍵でタイプでき、快適だったんじゃないかと思います。また、Eucalyn配列はホーム列の頻度が高いのがいいですね。

ちなみに僕の推しポイントはDvorak配列でホーム行に「ー」がある点です。

2つ目

良いお年をお迎えください

# QWERTY
yoi otosiwo omukae kudasai
# Dvorak
tsg sks;g,s smfiad ifha;ag

# Colemak
o;l ;f;dlw; ;minak nigadal

# Eucalyn
osf sjslfws sygkad kgialag

Dvorak配列では、左手がホーム行が母音で固まっており左右交互に安定感があります。

Colemak配列では最初の右手薬指小指の連続がきついですね。また左手右手の偏りが激しいときがあります。ただ、ホーム行の頻度がQWERTY配列ほど低くないのが良い点です。

Eucalyn配列では、2節目の末尾「ws」で同指打鍵がありますが、これ以外は快適ですね。

3つ目

英語のケースもあげてみます。

I can develop Linux a little.

# QWERTY
I can develop Linux a little.
# Dvorak
G ial hd.dpsr Pglfb a pgkkpde

# Colemak
L caj gkvku;r Uljix a ulffuk.

# Eucalyn
F ca; idvd.sp >f;gx a .fjj.dr

ネタで文を選んだからか、アルファベットのうち出現頻度が低く隅に追いやられた「v」と「x」が出てくる文になってしまいました。のでそれぞれ少しずつ打ちにくいかもです。ただ改善点は見えます。

例えば、QWERTY配列の3節目「develop」で左手が酷使されてますが、他の配列では解決されてます。


終わりに

3つのケースを挙げてみましたが、少なからずQWERTY配列以上の快適さはどこかに感じていただけたかなと思います。

あえてデメリットにはあまり触れてませんが、移行コストは馬鹿にできるものではありません。実際に使用する配列を移行するにはそれなりに忍耐が必要だと思います。ただそれを乗り越えれば、タイピングそのものが楽しくなるような体験が得られると思います。

ぜひ試してみてください。


この記事はCornelius(Gateron 3 Pins G Pro White Linear Silver Switches lubed w/ Tribosys 3204)で書きました。